「マドレーヌ フォン·ブローグリー侯爵夫人に」

そうだ 私たちはいるのだ けれども私たちにとって日々が速かに

まぼろしとともに過ぎ去ってゆくのは ほとんど羊の群にとってと変りがない

私たちもまた牧場がたそがれる度毎に

帰ってゆくことを望んでいるのに 誰も私たちを小屋へ追い込んでくれる者がない



私たちは昼も夜も いつまでも外に残っている

日光は私たちに快く 雨は私たちを驚かす 

私たちは起ち上ったり身を横たえたり

いくらか勇気をもったり 臆病になったりしている



ただ時おり 私たちがこのように苦しみ悩んで 熟れながら

それでほとんど死にはてようとすると そんなとき

私たちが理解できないすべてのもののなかから

ひとつの顔が生まれ それが輝かしく私たちを見つめている


An die Frau Prinzessin Madeleine von Broglie

リルケ 1906-1909年の詩